■第二回 他者理解
●自己開示とフィードバック
さて、人は他者と接するときにはまず行動・言語・態度といった見える部分で判断します。
しかし、そういった外面的なことは実は氷山の一角で、これらの背後には感情・思考・動機・価値観といった内面の見えない部分丙面的要囚)が姿を隠しています。
人は相手を見える部分だけで判断し、同時に相手もこちらを見える部分でしか判断できません。
人間同士が理解しあうためには相互にこの「見えない部分」について口に出したり、行動に表すことが必要になってきます。

(図1)『ジョハリーの心の窓』をご覧ください。この窓全体がひとりの人間を表しています。
パブリックウインドウは「自分も知っているし、他人も知っている自分」です。
この領域では人はのぴのぴと行動することができます。
一方、プライペートウィンドウは「自分が知っていて、他人は知らない自分」です。
つまり「隠している自分」です。
多くの場合、人は不安や恐れ、好悪の感情、コンプレックスなどを解決するよりも「隠す」ことにエネルギーを浪費していることが多いのではないでしょうか。
またブラインドウィンドウは「自分は知らないが、他人は知っている自分」です。
わかりやすい例は「癖」ですが、他にも、考え方やいざというときの対応など無意識の行動で他人に影響を与えていることも多いはずです。
こういった点では、身近な他人はあなた以上にあなたを理解している場合が多いものです。
そして、最後が「自分も知らない、他人も知らない自分」でアンノウンと呼ばれている領域です。抑圧された感情や隠れた才能などになります。
人はパブリック領域でもっとも効果的、生産的にコミュニケーションが図れます。
個人としても隠しごとなどがないため、リラックスして能力を発揮でき、他者との関係においても相互に理解し合っているので不必要な緊張や疑いを持つことなく、オープンで創造的な関係を築くことが可能だからです。
そのため、他者との艮好な関係を築くためには、この領域を相互に広げる努力が大切になります。
パブリック領域を拡大するためにはブラインド・プライペートの窓にその領城を広げていけばよいのです。
プライペートの窓に拡大するためには「自己開示」。
隠している自分をオープンにし、不安だ、頭にきている、好感を持っているといった感情を公表することです。
ブラインド領域に拡大していくには「他者からフィードバックをもらう」。
あなたはこういう良いところがある、といった意見を積極的にもらい、素直に受け止めることが効果的です。
これらを相互に積極的に行うことによって、自己理解を深めると同時に自分について他者に正しく理解してもらい、関係をさらに良いものとすることができるようになります。

●相手の話を「聴く」ということ
自分と他者の間に介在するものはいうまでもなくコミュニケーションです。
コミュニケーションは「聞く」と「話す」で成り立ちます。
他者理解を深めるために大事なのが「相手の話を聞く」ことです。
「聞く」ことは受動的な態度に思えますが実はたいへんな労力と心構えが必要です。
この場合正確には「聴く」ことになります。
つまり「聞く=Hear」と「聴く=Listen」の違いがあって、コミュニケーションに重要なのは心をこめて[聴く]という行為です。
相手を理解しようと思ったら「積極的な傾聴=Active listening」 が必要になります。
●聴き方について
では、具体的に「聴く」という行為はどうあるべきでしょうか。ここが今回のポイントです。
《聴き方の条件》
①事実は何か…話したいことの裏には必ず原因があります。だから「何があったんだい?」という態度で事実を聞き出すことです。
②感情はどうか…相手は喜怒哀楽のどんな感情のなかにいるのかをとらえる。
③欲求:どうしたいと思っているのかを聞き出す。
たとえば先日泣きながら子どもが帰ってきました。
五歳の子どもは興奮して手がつけられません。
「どうしたの、何があったんだい?」と具体的に聴いていきました。
子どもは「お友だちが・・・してね・・・」と延々話し出します。
おおよその状況が分かったところで「そしてOOちゃんはどう思ったの?」と聴いたところ
「ほんとは一緒に…したかったのに入れてもらえなくて悲しかったの」という答えでした。
すっかり落ち着いたようなので「それで○○ちゃんはどうしたいのかな?」と聴いたところ「お友だちに謝ってくる!」といって元気に駆け出していきました。
「聴く」ためには「一切の否定・批判はしない」ことが前提になります。最後に「他にいいたいことはない?」と聴いてあげます。「ないです」といったら「で、どうしたいの?」と聞きましょう。相談する人は必ず自分自身の結論を持っているものです。それを引き出してあげるのです。
●聴き方のテクニック
相手の心のコップの中にはいろいろなものが縁までタップリ詰まっています。
そこにたとえどんな高価なワインを注ぎ込もうとしても、注ぐそばからあふれてしまいますし、コップに入ったとしてもすっかり薄まってしまい、昧も何も分かったものではありません。
まずは、相手の話を聴くことでコップの中のものを出してあげましょう。
相手はいろんなことを話すことでコップが空になり、カタルシス(心の浄化)を得ることができるのです。
そうなったところで初めてあなたの話を切り出しましょう。
空のグラスに注がれてこそ、美味しいワインも初めて味わってもらえるのです。
相手の心のドアのノブはいつも内側についています。
どんどんとノックしたり、無理やりこじ開けようとしてもうまくいくわけがありません。
一生懸命聴いてあげることで内側から開けてもらうしかないのです。
【アサーティブに生きましよう】
日本人は自己を上手に主張することが苦手。
しかし、人間がコミュニケーションを交わし、相互に理解を深めていくためには、〈自己表現〉によって自分のことを相手に対して正しく伝えなければいけません。
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季刊誌「Talks」掲載記事:人間力向上コラム